2025年10月、日本初の女性首相が誕生し「高市トレード」と呼ばれる現象により、円安株高の動きが顕著になりました。積極財政と金融緩和を志向する政権のもとで、今後の為替市場、株式市場はどのように推移していくのでしょうか。
おなじみのソニーフィナンシャルグループ チーフアナリスト 尾河眞樹にインタビューしました。当社のブログの中でも大変人気なコンテンツです。ぜひご一読ください。
Q1:
高市首相就任後のドル円上昇について、主な要因として考えられることを教えていただけますか。
A1:
円とドルの両方の要因があって、まず円については主に2つあると思っています。
1つは、高市首相が昨年「今利上げするのはアホやと思う」と発言したことで、市場では「高市政権=日銀の利上げに反対」との見方が根強いということが挙げられます。高市政権誕生により一気に日銀の利上げ観測が後退したことは、円安圧力に繋がったと言えるでしょう。
2つめは、高市政権が打ち出した21.3兆円規模の経済対策によって、財政悪化懸念が高まったことが挙げられるでしょう。これにより、日本国債、特に長期債の価格が下落すると同時に円が売られました。
一方で、ドルについては、10月以降は米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長から12月の利下げは必ずしも確定していないという発言があり、米国の利下げ観測がやや後退したことが上昇要因となりました。
Q2:
12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の決定が、今後の為替市場や株式市場へ与える影響について、どのように予測していますか。
A2:
一時後退しかけた市場参加者による米利下げ観測も、足下では再び台頭し、12月の利下げはほぼ100%市場に織り込まれている状況です。したがって、利下げ自体にサプライズはなく、あとはパウエル議長がどのような発言をするか次第と言えるでしょう。
利下げを決定するからには、11月の雇用統計が悪化しているなどの指標が必要ですが、残念ながら米政府閉鎖の影響で、依然として9月の雇用統計までしか発表されておらず、10月、11月分は12月16日と、FOMCの後に公表される予定です。パウエル議長は前回10月29日のFOMC後の記者会見で、重要な経済指標が発表されていないことに対して「霧の中を運転するようなもの」と表現しましたが、そういう意味ではまだFRBは霧の中と言えます。
こうした状況で、パウエル議長が会見で、1月以降も利下げを続けるような、強いハト派色を出すとは考えにくく、10月と似たような内容になるのではないでしょうか。この場合、市場は今後利下げが続くことを期待していますから、期待が削がれることにより、発言次第ではドル高が進む局面もあるかもしれませんね。
Q3:
2025年10月にはドル円が1ヶ月で7円以上動いたように、為替レートの値動きが大きいときもあります。その中で外貨預金のお取引も活性化していますが、ソニー銀行のお客さまはどのような戦略を取るべきでしょうか。
A3:
今は特に、日米ともに金融政策の不透明感が高くなっているうえ、トランプ政権も来年中間選挙を控えるなか、支持率が低下しており、今後挽回を図ってどのような政策が飛び出すかわからない状況です。こうした、不確実性の高い局面においては、やはり分散投資が重要でしょう。
資産クラスの分散とともに、買うタイミングの分散も心掛けていただくと良いと思います。やはり積立は最も安心な投資手法です。同時に、資産運用の中に外貨預金を入れるのも、よい戦略だと思います。
今年、日本の円は最も弱い通貨となりましたが、日銀が12月に利上げに踏み切ったとしても、インフレを除いた実質政策金利は依然として大きくマイナスのままであり、円安圧力は当面続くと思われます。
さらに、資産運用をしていただく際に、最近特に重要になってきているのが、情報の取り方です。日米ともに、これまでよりも政府の政策が金融市場に大きな影響を及ぼす傾向がみられます。特に、米国のトランプ政権では、小さな政府、グローバリズムを推進してきた新自由主義から、政府が貿易などの企業間取引にも影響を及ぼし、ひいては金融政策にまで関与するようになりました。こうした変化を無視することはできず、各国の政治や政策面の情報をアップデートすることが、特に外貨のお取引をされる際には、今後さらに重要になってきそうです。
政策はその時々の情勢次第で変わりますから、あまり固定観念にとらわれず、柔軟な視点で幅広く情報収集することをお勧めします。是非ソニーフィナンシャルグループのレポートなどもご活用ください!
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