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10月以降の為替、株式市場はどうなる?チーフアナリスト 尾河眞樹 特別インタビュー

日本では総理大臣の辞任表明、海外ではFOMC(連邦公開市場委員会)にて約9ヶ月ぶりの利下げが行われるなど、20259月は大きなイベントが発生した月となりました。これをうけて10月以降の為替、株式市場は今後どのように推移していくのか、おなじみのソニーフィナンシャルグループ チーフアナリスト 尾河眞樹にインタビューしました。

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Q1
918日未明(日本時間)に行われたFOMC後の議長会見では0.25%の利下げが発表されました。直近の経済指標で弱い結果が出ていたことから、マーケットでは0.50%の大幅利下げの可能性も浮上していた中での結果でした。年内ではあと2回のFOMC10月下旬・12月中旬)が予定されています。今後の利下げペースや為替市場への影響も含めて、尾河さんの見立てを教えてください。

A1
はい。現在当社では、今年12月に1回、来年6月に1回の計2回、0.50%ポイントの利下げを予想しており、政策金利は3.50%~3.75%(中央値で3.625%)まで引下げられ、そこで利下げは打ち止めとみています。FF金利先物を見ますと、市場では2027年末までに、2.8%付近まで利下げが実施されるという予想になっていますから、当社の予想は市場のコンセンサスと比較すると「タカ派」ということになりますね。

金融政策の見通しの根拠は、米国のインフレが高止まりするとの予想に基づいています。8月の米インフレ率は、コアCPIが前年比3.1%、コアPCEデフレーターは同2.9%と、ほぼ3.0%付近の伸びとなりました。またコアCPIを財とサービスに分けると、財は前年比1.5%と伸びが拡大しており、関税の影響が徐々に現れている様子が窺えます。家賃の伸びが低下していたことから、これがサービス価格の抑制につながり、全体としてみれば、関税の物価全体への影響は見えづらくなっていますが、米国のインフレはこれから加速する可能性があるとみています。加えて、来年、トランプ減税や規制緩和が始まれば、米国経済は持ち直し、インフレも2.0%超で高止まりすると予想しています。私たちの見通しが正しければ、市場の大幅な利下げ予想が後退して行くにしたがって、ドルは上昇して行くでしょう。

Q2
トランプ大統領の「ディール」の影響についてもお伺いします。
今年1月の再就任当初は各国への関税措置への警戒感から米国の主要株価指数は下落しましたが、中国との関税合戦が収束してからは投資家心理も改善し、結果としてはV字回復を遂げています。日本の株式市場も同様に4月からV字回復を遂げており、日米の関税交渉が合意した後は日経平均株価が最高値を更新しました。トランプ大統領の動向に日米含めた世界経済が左右された上半期となりましたが、下半期の日米株式市場ならびに為替市場に与える同氏の影響はどのようにお考えでしょうか。

騰落率・為替レート 2024年12月末 2025年4月末 2025年8月末
NYダウ 0.0% ▲4.5% +7.0%
日経平均 0.0% ▲9.6% +7.1%
米ドル円 156.84円 143.07円 147.05円

NYダウ平均株価・日経平均株価は202412月末を0%とした騰落率を図示。(出所:Bloomberg

A2
確かに、今年上半期の経済政策不確実性指数(EPU・グローバル)を見ますと、相互関税が発表された4月には628と、コロナショックの421を大きく上回りました。その後、各国との「ディール」によって低下しましたが、それでも8月は322と、バイデン政権の平均値228を上回っています。

政策の不確実性が高いにも関わらず、日米の株式市場が高値圏で推移しているのは、FRBの大幅な利下げ期待TACOTrump Always Chickens Out/トランプはいつも怖気づいて退く)への期待③市場に滞留する緩和マネー④底堅い米国経済、の主に4点が挙げられるとみています。

③については、2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックを経て、日米欧の中央銀行が金融市場に大量に資金供給を行った結果、20259月末時点の中央銀行のバランスシートは20081月末比でFRBが約7.3倍、ECB4.5倍、日銀が6.3倍と大きく拡大しており、こうした過剰なマネーが金融機関やファンドを通じてリスク資産に向かっていると思われます。中央銀行の資産もピークからは減少したものの、さほど資金の回収は進んでおらず、これからもゆっくりしたペースでしか進まないと考えると、株式市場の堅調ぶりは当面続くと思われます。足下の底堅い米国経済も、株価の支援材料となるでしょう。

ただし、①、②については、期待が先行している点には要注意です。先ほどもお伝えしたように、市場の米利下げの織り込みが行き過ぎていると思われることや、②についても、仮にトランプ大統領が「米国の製造業復活が遅い!」とみてさらに関税を引き上げるようなケースが見られれば、失望感から株式市場が崩れる可能性があります。④についても、今後も弱い雇用市場が続く下でインフレ率の上昇が顕現化すれば、個人消費が下振れする可能性もあります。したがって、米国経済やインフレの動向、トランプ大統領の政策には引続き警戒が必要です。

Q3
ソニーフィナンシャルグループで発行しているマーケットレポートについても質問させてください。筆者自身が外貨取引を行うにあたって、各国の為替市場や経済動向に対するプロの見解をまとめて確認できるマーケットレポートは大変重宝しています。
ソニー銀行では91日より米ドル定期キャンペーンを開始しており、大変ありがたいことに当社で初めて外貨取引をするかたが続々と増加しています。一方で、初心者にとってはマーケットの情報を集めることが大きなハードルになります。レポートを読む頻度や最初に読むべきページなど、初心者にもオススメの読み進め方があれば、教えてください。

A3
マーケットレポートを重宝していると伺い、嬉しいです!外貨への関心が高まっていることは、とても良いことだと思います。短期的には、日銀が仮に早期利上げに踏み切れば、円高が進行する可能性もありますが、長い目で見れば日米の金利差が大きく縮まる可能性は低く、さらに基軸通貨であるドルの保有メリットは大きいとみています。

当社では、日次、週次、隔週、月次、四半期ベースと、各種のレポートを揃えており、加えて、各アナリスト・エコノミストによるスペシャルレポートや、金利に特化したグローバル経済金利ウォッチ、エグゼクティブエコノミストによる菅野レポートなどもあり、それぞれ特徴が異なります。

 外貨にご関心のある初心者のかたへのおすすめは、まずは、デイリーと、ウィークリーでしょう。デイリーレポートは、為替だけでなく、債券、株の前日の市場と当日の見通しが短く解説されており、市場全体の短期の動きを掴むのに有効です。ウィークリーレポートは、為替相場に特化したレポートで、アナリストがそれぞれの専門分野でドル、欧州通貨、新興国・資源国通貨について解説しており、今週の注目イベントのスケジュールなどもチェックいただけます。

 グローバル経済・金利・為替の見通しをしっかりと読み込みたいかたには、月に一度発行されるマンスリーレポートが良いでしょう。当社の特徴は、アナリスト・エコノミストが力を合わせて全員で1つのレポートを仕上げていることです。グローバルな動きを詳しく見たいかたは、この1冊をお読みいただければ全体が掴めます。さらに長期の見通しを確認したい場合は、四半期レポートをご利用ください。日米の当社の経済・金利・為替見通しが箇条書きで端的に解説されており、使いやすいと思います。

 初心者のかたにもうひとつおススメしたいのは、このレポートを読む!と決めたらしばらく継続いただきたいということです。よく「定点観測」といいますが、市場の変化をとらえるにはこの「定点観測」が大事です。週次、月次でも構いませんので、同じレポートを継続してお読みいただくことで、大きな市場の変化をとらえることができると思いますよ。

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